
森林の鳥類は、植食性昆虫の捕食、種子散布、樹洞の形成など、多様な生態系機能を担っています。こうした役割がどのような鳥類群集によって支えられているのかを理解することは、森林の健全性やレジリエンスを考えるうえで重要です。本研究では、鳥類群集の機能的冗長性に注目し、どのような森林環境や管理条件のもとで、鳥類が担う生態系機能が安定して維持されるのかを明らかにしようとしています。
森林の鳥類が担う生態系機能
鳥類は、森林生態系の中で多様な生物群の1つというだけでなく、重要な生態系機能の担い手でもあります。たとえば、昆虫食の鳥は植食性昆虫を捕食することで樹木への食害を抑えており、果実食の鳥は種子散布を通じて樹木の更新を支えます。さらに、キツツキ類などが作る樹洞は、他の鳥類や哺乳類、昆虫のすみかにもなります。こうした機能は、個々の種の存在だけでなく、群集全体としてどのような機能特性を持つかに左右されます。そのため、鳥類の多様性を種数として把握するだけでなく、どのような役割を持つ種がどの程度含まれているかを考えることが重要です。
機能的冗長性とは何か
機能的冗長性とは、似たような機能を持つ複数の種が群集内に存在する状態を指します。もしある機能を担う種が1種しかいない場合、その種が減少すると機能が失われやすくなります。一方、同様の役割を担う種が複数いれば、環境変化があっても群集全体としての機能が維持されやすくなります。本研究では、この機能的冗長性が森林のレジリエンス、すなわち攪乱や環境変化に対する回復力や安定性にどのように関わるのかを検討しています。どのような森林環境で、どのような鳥類群集が形成されると、生態系機能が安定しやすいのかを明らかにすることが目的です。
研究方法
研究では、直接観察やパッシブ音響モニタリングなどの調査を通じて種組成や出現頻度を把握するとともに、採食行動や生息環境利用、形態特性などの情報を組み合わせて、鳥類群集の機能的多様性を評価し、森林構造や植生、多様な環境要因との関係も分析します。また、機能的冗長性や生態系機能を指標化し、森林の管理状態との関連を定量的に明らかにすることに取り組んでいます。
森林管理への示唆
鳥類が担う生態系機能を安定して維持するためには、どのような森林構造や景観配置が望ましいのかを理解することが重要です。これは単に鳥類保全の問題にとどまらず、森林全体の健全性や持続可能な管理に関わる課題でもあります。本研究では、鳥類の多様性を「機能」という視点から捉えることで、森林管理に対して新たな示唆を与えたいと考えています。生物多様性を保全することが、そのまま森林の機能や回復力の維持につながる条件を明らかにすることが目標です。
